「これで大丈夫ですか?」


「…うん、確かに受け取った。ありがとう」


何か返事を返そうとしていたが、激しく咳き込んで慌てて顔を逸らした。


乾いた咳は途切れない。


「大丈夫かよ」



「……すみません」




落ち着きを取り戻して顔が上がるが、具合の悪そうな高島には苦笑するしかなかった。



「随分と変な咳だな…」


「乾燥してるのかもしれないですね」


「ただの風邪か?」


「熱は下がりました…、一晩寝たら大丈夫です」


「本当かよ…そんな咳じゃないよ」



肩を使って呼吸を繰り返すと、堪え切れない細かい咳が続いた。



「明日は無理だな、休み。お疲れ」


「まだわからないじゃないですか」


「一目瞭然だよ」


「…薬を飲んだらわかりませんよ?」


「だとしても一晩じゃ無理」


「……」


「とにかくゆっくり休んでよ」


「…すみません」




ここ数日深夜まで医局にいるのを見ていたし、睡眠不足も続いていたのだろう。


「押しかけてごめんね」


「いや…、こんな玄関先ですいません」


「そんなのいいよ…、とりあえず無理はやめてほしい」


「ありがとうございます」


「じゃあ、おつかれさま」



酷い咳に混じった「お疲れさまです」の声を聞き取り、無意識の苦笑を浮かべて扉を閉めた。



あれは長引くよ…。