「…で?まさか、突き放したんじゃないよな?」





心配して連絡をくれた季蛍さんにお礼を伝えると、聞き耳を立てていた蒼が口を挟んできた。




「意味不明に号泣されて本当に困ったんだよ」


「安心したんだろ」


「子供なのかと言いたくなる」


「奏太は変わらずだな」


「薬を飲むかどうかの判断なんて自分でしてもらいたい」


「一緒に決めて欲しいだけだよ」


「…理解できない」


「聞いてやったのか?話」


「"落ち着け落ち着け"と言っているうちに眠ってた」


「んふふ、愛香らしい」





季蛍さんも可笑しそうに笑うが、俺からしてみれば笑い話ではない。


「マジで困ったんだからな」


「それでも奏太くん、運んであげたんでしょう?」


「そのままにしておく訳にもいかないでしょ?」


「それもそうですね」


「数日間どうも避けられていると思ったらアレだからな…、訳分からない」


「愛香さんだって奏太の忙しさを分かった上で配慮しながら耐えてたんだからな…。少しは理解してやりなよ」


「…あぁ、わかってるよ」


「なんだ、わかってたの?」


「奏太くんが気が付かない訳ないじゃん!」



『わかってたの?』と問う蒼に言い放つ季蛍さんに、迷いはない。



「俺が奏太に声を掛けた時は全く気がついていない様子だったけど?」


「あぁ、あの時は本当に気づいてないよ」


「その後か」


「異変に気がついてようやく蒼の言っていた意味を理解した」


「奏太は常にバタバタだからしょうがないと思うけどな」


そう言いながら蒼が指さす白衣のポケット。


呼び出しの連絡だ。




「話しかけておいて悪いな」



「平気だよ」



呼び出しの連絡だと気がついた二人は、医局に戻って行った。