正直なところ、涙を見ると緩む自分がいる。
自己申告してくる体調不良は、大体が
「それくらい大丈夫」
と判断されるものだ。
今回のように、数日の間帰宅する俺と目を合わせず先に眠り隠すような体調不良には、何かしら訳があった。
「やめたい…」
リビングで愛香が俺に向けて差し出した袋の中身は、まだ半分も減っていない薬だ。
「先生に言ったらいい」
「…飲むのやめてもいいの?」
「俺の体じゃないからな」
「……そういうことを言いたいわけじゃない」
ため息をついた愛香は、薬の袋を棚の中に突っ込んだ。
今の流れから
"そういうこと"
でない解釈を見つける方が難しいだろ…
と、思わず苦笑してしまう。
「…奏太仕事忙しいんでしょ?」
棚の扉をパタンと閉めた愛香が、か細い声で聞いた。
髪で表情を隠そうとする不審な行動のせいで、頬に伝う涙には気がついた。
…また泣いてるのか