「奏太くんは?」
「…仕事」
「そうじゃなくて…」
「……」
「奏太になんか言うわけない」
そう言い放った愛香は、少し顔を伏せた。
「…も、平気。ありがと」
背中をさすっていた手を止める。
「まだ気分悪い?」
「大丈夫かな…、水分取ったら落ち着いたみたい」
そう言って笑うけれど、顔色は嘘をつかない。
「薬の副作用かな、それに書いてあったし」
愛香が指を指した先には、病院からの処方箋があった。
「うん…言い切れないけど」
「こんなになるなら飲まない方がマシだよね」
笑っているつもりなのだろうけれど、隠しきれない表情の引き攣り。
「薬やめたい」
「…先生に相談したら?」
「そしたらまた吐き気止めって、どんどん増えるだけだから」
「いや、そうとは限らないよ…」
「前はそうだったの」
「話したら考えてくれるよ」
「…そうかな。でもまた病院に行ったのがバレたら奏太に聞かれるから」
「…ダメなの?」
「面倒くさいの、心配はしてないくせに」
「……」
そんなことないよ
…って言っても、きっと愛香は首を振るんだろうな。