感覚の弱い指先を伸ばして掴んだ携帯電話。
画面を照らしてみると、ぼやけた視界にゆっくり現れた『23:48』の文字。
いくら奏太が今夜は帰宅しないからといって、リビングを片付けないまま眠るのは避けたい。
そう思っていても、重い体が動かない。
起こした頭を再度ベッドへ預けた。
そう言えば、さっき季蛍と会話をしたような気がする。
…いや、昨日の話か?
会話をした内容も、ハッキリではないが思い出せる。
…夢かもしれない。
手のひらにあった携帯電話の画面をもう一度照らし、ぎこちない操作で開く電話帳。
確認すると、通話履歴にハッキリ季蛍の名前が残っていた。
勘違いではなかったようだ。
携帯電話の画面を消灯させると、部屋は暗闇に包まれた。
そうしてまた、目を閉じたくなってしまう。
…あぁ、ダメだ。
体を起こさなきゃ。
部屋を片付けなきゃ。
頭では 分かっているつもりなのに。