「はい」
「…ありがと」
止血して軽く処置をしてやれば、身を縮めてしまった。
「お皿割ってごめんね…」
「いいから…、しょうがないだろ」
「うん、でも…どうしよ」
野菜を入れていたボウルはひっくり返してしまったようだし、キッチンも割と酷い状態だ。
「愛香、電話して」
「え…ッ、でも…」
「たまにはいいから」
「じゃあ私が…」
「片付ける?無理だろ、その手じゃ」
「……」
デリバリーのチラシを適当に押し付けると、渋々それを受け取ってリビングへと行った。
不注意であってもあそこまで深い傷を作るのだろうか。
料理に不慣れな訳では無いし、手を滑らせてあのような怪我をするとも考えにくい。
割れた皿を片付けながら、そんなことを考えた。