「洗ってきて」


「これくらいほっとけば治るよ」


「……」




そんな程度の傷じゃないだろ?




「どうやったらそこまで深く切るのか教えてもらいたいよ」



突っ立ったままでいる愛香の服を引っ張り、洗面所へ。




「洗って」


「…こんなの大丈夫だって」



不満を漏らしながら蛇口を捻ると、傷口を濡らすように洗い始めた。



「あのなぁ…」


「…ッやだ、」



手を掴もうとすればその手を払われ、キッと睨まれる。



「子供じゃないんだから」


「痛いから!」




傷口からは未だに血液が溢れている。




抵抗しないように愛香の背中から両手を回し、肌に残った血液を綺麗に洗い流す。


そうしてよく見ると、2本の指が切れていた。


どうりで出血量が多い訳だ。





「じっとして」


「痛いって!」


「自分で洗わないんだからしょうがないだろ」





傷口を洗い終えると、口をへの字に曲げて不満そうな顔をした。


「もう泣くから」


「あぁ、勘違いしてたよ。愛香は大きい子供だったな」


「…ッ、ムカつく…」