何かが落ちる大きな音がした。


驚いて顔を上げるが、どうやら愛香が落としたみたいだ。


すぐに手元に視線を戻したが、そんなに間が空かないうちにまた何かが落下した。


今度は何かが割れる大きな音。



「愛香ー?」


リビングから名前を呼んでみる。



手を滑らせたのかと思ったが、返事がないことに疑問を抱いた。




あんなに騒がしい物音が聞こえたら、確認しない訳にはいかない。




「皿割った?」



そう言ってキッチンを覗き込むと、理解し難い光景があった。




「え…?」




左手から血を流し、呆然とした表情で流し台に体を寄せている。



愛香の背後には食器がいくつか落下していて、割れた皿の破片が散っていた。



すぐに理解する方が難しい。









「切った?手」


パッと見 どうやら指から出血しているみたいだ。


血液を水で流していたのか、若干手のひらに水分が残っている。

そうでなければ服の袖もここまで濡れないだろう。







「立てる?」


「血…、」




俺の言葉はまるで聞こえていないようで、手のひらを見て呼吸を荒くする。



「あー、…ったく」



出血も止まっていないようだから、とりあえず愛香をリビングへ移すことにした。