「毛布使って」
「ありがとう…」
指先にまで伝わる冷たい感覚。
室内の気温が低い訳ではないのに、爪先までもに冷えを感じる。
「私が人に言えたことじゃないんだけどさ」
背中を擦ってくれる季蛍が、柔らかな声で言った。
「私もしんどいとき、どうしても隠したくなっちゃって」
「…」
「こんなときに迷惑だろうなとか、またかよって思われるかなって」
「ふふ…蒼くんが?」
「うん、そんなの言われたこと一度もないのに」
「…」
「愛香の気持ちはすごくわかるけど、奏太くんに頼れないような関係なの?」
「…ううん、そんなことない」
季蛍の細い腕で抱き寄せられ、人の温もりを直に感じる。
今なら奏太に言えそうな気がするんだ。
少し休みが欲しい、って。
季蛍が隣にいるせいなのかもしれないけれど。