「ちょっと、大丈夫?」
リビングへ戻ってきた愛香の顔色は、わかりやすく青ざめている。
「貧血気味なだけ、最近よくある」
「よくあるって…病院行ってないんだよね」
「日常生活に支障はないの」
「何かあってからじゃ遅いって」
「大丈夫、貧血だから」
「それだって病院に行く理由になるんだよ」
「大丈夫、本当に心配しないで」
バッグから取り出した薬を一錠取り出すと、水で流し込んだ。
「…目眩の薬?」
「うん、少し落ち着くの」
「主治医の先生にちゃんと話した方がいいからね?」
「わかった、そうする」
少し会話を続ければ、徐々に深くなる呼吸。
「最近ずっとこんな調子…」
俯いた愛香の口から、そんな言葉が漏れる。
「なんなら私、病院についていくからね」
愛香の頷きが返ってくるが、その様子を見ていると不安になる。
心配なのは、奏太くんも同じだと思うのだけれど。