「ハハッ…、そんなこともあったのかぁ」
俺が思っているよりも、彼はすごい人だった。
「僕んちの娘もそんなんですよ」
呼吸を荒くしてまで緊張していた陽も、今は彼の話に相槌を打ちながら時々笑顔を見せる。
「将来は大物になりそうだ」
笑いながらも手際よくテーピングを進めていた彼が、
「終わりました」
そう言って椅子を引いた。
診断の結果は、思っていたように捻挫であった。
彼も言うように、怪我直後の応急処置が良かったのだと思う。
そうでなければもっと大きな症状が出ていたかもしれない。
あの日季蛍さんが声を掛けてくれて本当に良かった。
「今後は回復に向かうと思いますから」
「ありがとうございます」
陽はその場でお礼を言うと、こちらへ柔らかい表情を向けた。
良かった…、ホッとした。
診察室に入る前からは想像もできない陽の表情を見て、肩の力が抜けた。