「…行ける?」


名前が呼ばれると、陽は深い呼吸を繰り返した。





「うん、平気」


肩を上下に動かしながら呼吸を続けると、俺の背中に手を当てて寄り添いながら診察室へ。





不眠が続くほどの嫌な感覚を思い出してしまったのだから、そんな感覚を覚えた病院を拒むのは当然のことだと思う。


だけれど陽は、

『平気』

そうやって何度も無理矢理な笑顔を浮かべ、できるだけいつも通りに乗り切ろうとしている。










「こんにちは」




そんな陽の状態を軽く伝えておいたこともあり、堅苦しい雰囲気はそこにはない。



少しでも交流のある医師だと、そんな話も気軽に相談できるから楽だ。





「こんにちは…」



言ってしまえば小児科のような診察室の雰囲気に、陽の表情は少し和らいだ気がした。