「陽は一度会ったことがある先生だよ」
待合室に身を縮めて座っていた陽に声を掛けると、青ざめた顔で小さく頷いた。
さっきも車を降りるときに右手をついて悲鳴を上げていたようだし、今回の受診は必要であると思う。
陽にとっては、ハードルが高いかもしれない。
「帰りたい」
引きつった笑顔を見せて言葉を漏らす陽だけれど、俺には
『怖い』
そう言っているように思えた。
「優しいからな?大丈夫だ」
隣にいても、できることはそれくらい。
ありがちな言葉を掛けて、そっと手を重ねるだけ。
「…心臓がうるさいよ」
無理矢理口角を上げて笑った陽は、重ねた手をぎゅっと握り返した。


