それから少しすると、インターホンが鳴った。
蒼が玄関を開けに行くと、スーツに身を包んだ港くんがリビングへ。
「本当にごめん」
申し訳なさそうに謝る港くんの背中を、蒼が二度軽く叩く。
「いいよ、謝んなくて」
「迷惑を掛けた」
「本当に偶然、季蛍が見かけただけ」
「そうです、それも気になって無理矢理連れてきちゃっただけで」
「陽は駅にいたんだって…?」
「階段で少し足を滑らせてしまったみたいで」
「陽は病院に行きたがらなかったんだね」
分かりきっている港くんは、納得したようにため息を吐いた。
「大きな怪我がなくて良かったよ」
"とにかく見に行ってあげて"
と言葉を残し、蒼はキッチンへ姿を消した。
「とりあえず手を洗ってくるね」
「あ、掛けておきます」
港くんが脱いだ上着を受け取り、ハンガーへ。
「ありがとう季蛍さん」
「今日は学会か何かですか?」
「たまたま病院を離れててね」
「そうなんですね」
「当直じゃなくて良かった…」