「ただいま」
帰宅した蒼は、部屋の中を見渡して言った。
「メッセージ見たよ」
「港くん、今日帰れないかな?」
「病院で見なかったからメールしておいた」
「そっか…」
「…陽さんは?」
「寝室で横になってる」
「…とりあえず港の帰りを待とう」
当直明けの私が今朝利用した駅のホームで、偶然見かけた陽さんの姿。
結くんを連れている様子はなかったので、1人で歩く陽さんの後を追った。
しかし、背後から見る陽さんの様子はどこか不自然で、もしかしたらと思った時には早足になっていた。
けれど、利用者の多い時間帯だったこともあり、一度見失った陽さんの姿。
人混みに押し流されないように見回した中で、やっと見つけた陽さんの姿。
そうやって近寄ったとき、階段の途中で崩れた陽さんを見て、思わず足を止めた。
「陽さん…!?」
気が付かない周りの人が、我先にと押してくる。
数段体が落ちたあと、微かに聞こえる数人の悲鳴。
それからのことは、あまりよく覚えていない。