蒼が顎をクイッと向こうに向けるので、視線をやると眉を寄せた陽の表情が読み取れる。
「…本当に食べないな」
蒼の苦笑いを見て季蛍さんに目を向けると、同じく箸を置いていた。
席を立って陽の元へ近寄ると、
"食べている"
のをアピールしたいのか、慌てて箸を持つ。
「ふふ、季蛍さん?」
「…あ、食べてますよ」
「そう?…陽は?」
「食べてるよ、…ほら」
指に握られた箸を見せ、そう言うけれど。
俺はずっと見ていたよ。
「無理はしなくていいからね」
「…うん」
「季蛍さんも」
「え…ッ、はい」
戸惑う季蛍さんに、蒼もわかりやすく苦笑する。
席へ戻ると、小さなため息が聞こえた。
「何だって?」
「食べてる、って」
しつこく言うと、陽に睨まれそうだから。
この辺にしておこう。


