「あのね、季蛍ちゃんがさっき何もないところでコケちゃって」


陽から受け取った処方箋を見ていたら、クスクスと陽が笑っている。


「陽さん!それは言わなくていいんです!」


「だって可愛かったんだもん」





耳を少し赤く染めた季蛍さんの背後で話を聞いていた蒼は、わかりやすく苦笑した。





「怪我なかった?」


「あッ、そういうのは全然…、大丈夫なんですけど…」


「ふふふ、ちゃんと両手ついたもんね?」




季蛍さんは恥ずかしそうに若干俯き、そして小さく頷いた。





「あんなに笑ったの久しぶり」


「そんなに面白かったですか?」


「うん、だって何もないところだったから」






自然と笑っている陽を見られることが、素直に嬉しい。


ここ最近は眠れない眠りたくないと、苦しんでいる陽を見てばかりだった。


陽だって笑っている方がずっと楽だろうね。







「お手洗いをお借りしてもいいですか?」


「どうぞ!」





陽が場所を案内しに、季蛍さんと洗面所へ。




そうして蒼に目を向ける。






「仲が良いな」


「季蛍さんの存在は本当に大きいよ」