体を起こしたままぼーっとしていること約20分、呆れた港が腕を引く。
「陽」
「…ッ、やだ…ッ」
無意識に払う手。
震え出す指先。
「…陽、こっちおいで」
上半身を起こした港に手を引かれ、されるがままに腕の中へ。
背中に回された手のひらに、温もりを感じる。
「…どうした」
「ううん、…何でもないから」
まとわりついていた嫌な感覚は残っているが、不思議と港なら怖くない。
「陽」
「…何?」
「薬はやめるのか?」
「…わからない」
「眠れないのは辛いだろ?」
「…大丈夫だよ」
何も言わなくたって、港はすぐに察してしまう。
「陽の大丈夫はあんまり信用できないな」
「…ひどい」
「はは…、現に顔が辛そうだぞ」
「大丈夫だって言ってるじゃん」
「だといいけど」
安心する腕の中で、グッと唇を噛み締めた。
なぜか 泣いてしまいそうだ。