「よっ」
「ん、どうしたの?」
「いや、別に」
飛び交う看護師の挨拶に返事をしながら、奏太と並んで廊下を歩いていく。
「今日は帰れるんだ」
「なんとかね。奏太は?」
「俺は当直」
「そっか」
「なにか食べる気にもなんねーな、忙しいと」
「…って、買ってんじゃん」
「はは、バレた」
バレたも何も隠す気なんて更々ないよな…。
「あのさぁ」
「何?」
「ゆいくん、あれからどう?」
「え?…あぁ」
最初からそれを聞きたかったのね…
と思いつつ、奏太の気遣いは嬉しい。
愛香さんには厳しい割に。
「熱は下がったってメッセージが入ってたよ」
「そうか、よかった」
「ありがとう、奏太の説明聞いて安心したみたいだから」
「いや、俺は別に」
エレベータの前まで来ると、奏太は眠たそうに欠伸をひとつ。
「お疲れ。当直頑張って」
「おう、じゃあまた」