「陽、寝よ」
「…おやすみ」
寝室に誘っても、陽はその場から身動きを取らない。
「ほら、こっち」
「私ゆいがいつ泣いてもいいようにここにいるから」
「……ハァ」
眠れないから布団に入りたくないだけだろ…、陽は。
「…薬は?」
「飲みたくない」
「…そう」
一応眠れるように処方された薬はあるが、少し前から『飲みたくない』と服用も中断した。
先生はそれでもいいと言っていたから、陽の意思を曲げるつもりはないのだけど。
「薬は飲まなくていいから、…ほら」
背中に手を回して少し持ち上げると、諦めたのか素直に立ち上がった。
「…寝たくない」
「眠らなくていいから横になって?」
寝室まで腕を引き、陽が布団の中に入るまで見届けた。