「ゆいは?大丈夫だったか?」
一応奏太からは聞いたけれど、看病をしていた陽の口からも聞きたいことはある訳で。
「大丈夫だった…、でも痙攣起こして…」
突然表情が暗くなってしまった陽の手を引き、ソファに腰を下ろす。
「問題なかったんだけど、脱水気味だったから点滴して薬もらって帰って来た…」
「そうなんだ、ありがとうね」
陽は完全に下を向いて、言葉を詰まらせてしまった。
「で、陽は?大丈夫なの?」
「私は平気だよ…」
そんな顔色で『平気だよ』なんて言われても、笑うことしか出来ないが。
「問題なくて良かった」
「うん…、私もホッとした」
少しの間のあと、陽が顔を上げて言った。
「…港」
「ん?」
「ゆいが食べ物投げたとき、私怒っちゃったんだ…」
「ゆいはそんなことしたのか」
「食欲なかったの気が付かなくて…、きっと食べたくなかったんだよね…」
「でも投げたらいけないのは本当でしょ?」
「…そうだけど」
「怒っていいよ、ダメなんだから」
「…うん」
「陽は怒っちゃったことより、熱に気が付かなかったことが引っかかるんでしょ?」
「…。」
黙りこくった陽は、俺に身を委ねてきた。
「すぐに気づいてたら、病院にも早く行ってあげられたと思うの」
「うん、でももう大丈夫だから」
「…引きずらない方がいい?」
「あの朝俺も触れたけど、熱いなんて思わなかったよ。
突然熱が上がることだってあるんだから」
「…そっか」
「とにかく、ゆいが治るまでは…ね?」
「…ん、そうだね」