「…熱性痙攣?」
痙攣が治まった結は、脱水症状のため点滴をすることになった。
痙攣の原因は熱性痙攣と呼ばれるもので、小さい子供が高熱を出した時によく起こるものだと言う。
「痙攣の様子によって薬を使うこともありますけど、結くんの場合は問題ありません」
先生の説明を聞くと、ホッと力が抜けた。
「パニックになってすみません…」
情けなさからそんな言葉が自然と出ると、先生は柔らかい声で『大丈夫ですよ』と笑った。
「焦ってしまう気持ちはわかります」
結に安心感を与えられるのは私だけなのに、情けない姿を見せることはできないな…。
「お薬は朝昼 食前2回飲ませてください」
「わかりました…」
くるりと椅子を回した先生が
「港先生は帰らなかったんですね」
なんて言うものだから、驚いて変な声が漏れる。
「僕、同期なんです」
そう言われて初めて胸元の名札をチェックし、どこかで見たことがある理由がわかった。
「島根先生…?」
「はい、知ってます?」
「…なんとなく」
「僕はゆいくんのカルテを見て初めて気づきました」
そう言われれば以前にも診てもらったことがあったような…。
「今日は帰るといいですね」
「…はい、本当にそう思います」
不安から開放された勢いで、つい本音が漏れた。
「じゃあ部屋移して点滴しますね。お母さんも一緒にどうぞ」
「はい」
ぐったりしている結を抱え、部屋を移動した。