数分カルテの整理をしていたら、廊下からパタパタと足音が聞こえた。



足音が止まったと思って少し待っていたけど、扉が開く様子もない。



扉を開けて隙間から覗いてみると、待合室のソファに腰掛ける季蛍さんの姿があった。



「季蛍さん、どうぞ?」



「…こ、港くん」



少しびっくりしたように顔を上げた季蛍さんは、何だかぎこちない笑顔を浮かべる。


「…大丈夫?」



「いや、すみません…遅くなっちゃって」



「うん…大丈夫だけど…今日喘息は?」



「落ち着いて……ない…です」



診察室の扉を開けると、季蛍さんはゆっくり足を踏み入れる。


「俺、高島みたいに丁寧な自信ないけど」



「えッ…いや、全然…むしろ港くんに悪いです」



「俺は全然大丈夫。


…だから高島以上に時間はかからないと思う」



時計を見上げてそう言うと、季蛍さんは少し硬い表情を緩めた。