「だったら奏太先生に診てもらいなさい。俺はもう知らないからな」
声は柔らかいのだけれど、小春ちゃんも間に受け止めてしまうよね。
「…そうする」
小さな声が聞こえて、頭をコテンと俺の胸に預けた。
「桃、背中も診るよ」
なんて言いながら涼先生に目で合図をされたので、小春ちゃんを抱えたまま病室を出た。
「小春ちゃん」
廊下に出たら、ポロポロ涙が溢れ出す。
「本当に先生に診てほしい?」
涼先生も冗談だろうし、俺だってそんなつもりはない。
小春ちゃんだって、本当は違うよね。
「…うん」
「涼先生はあんなこと言ってたけど、本当は小春ちゃんのこと心配だよ」
「ううん、りょう先生おこってるもん」
「そうか、…どうする?」
「……」
「…あやまる」
「謝る?えらいな」
「…ゆるしてくれる?」
「大丈夫だよ。小春ちゃんだって、ちょっとイヤになっちゃっただけだよね」
「でも、こはるキライって言っちゃった」
「…はは、本当に嫌い?」
「…ううん」
「じゃあ大丈夫だ。あやまって涼先生に診てもらおう」
「…そうする」