「そーたせんせい!」
「…ん?」
医局へ戻る途中で白衣を引かれ、立ち止まって振り向くと見覚えのある女の子が立っていた。
「抱っこ!」
「小春ちゃん」
「せんせい抱っこ!」
腕をグイグイ引っ張ってきて、両手を懸命に伸ばしている。
「涼先生は?」
「知らない」
「…ん?」
涼先生の名前が出たとき、一瞬表情が曇ったのを見逃さなかった。
「知らないか、一緒に探す?」
「探さない!」
「…はは、何かあったな」
縋りつく小春ちゃんの体を抱き上げると、すぐに気がつく体の温かさ。
目を合わせてもう一度。
「小春ちゃん、涼先生のところ戻ろうか」
「りょう先生、いそがしいからムリだよ?」
「そうなの?」
「だからこはる、そうた先生のところに来た!」
「そうかぁ」
胸元のボタンが空いているのには、何か訳がありそうだけれど。