「みんなと遊びたいな」
瞼が閉じるのを必死で耐え、小春が呟く。
「明日な」
「…病気だったらあそべない?」
「明日決めよう。元気だったらみんなと遊べばいい」
「…うん」
胸を叩くのを少しでも止めれば、目を開けて俺の白衣を掴んでくる。
「せんせ…」
「…なに?」
「…ずっといてね?」
「…。ずっといるよ」
小春の寂しい気持ちはよくわかる。
本当は自分だって母親に会いたくて仕方ないよね。
そうやってしばらく胸を叩いていたら、両方の瞼が閉じた。
起こさないようにまだ胸を叩き、しばらく様子を見る。
叩く間隔を長くして、少しずつ手を止めたのだけど。
「…せんせい」
瞼はまた開いてしまった。
慌てて再開させる。
「どうした、小春」
「…かないで」
「行かないよ」
「ここ…いて?」
「いるよ」
「りょ…せんせい」
その言葉を最後に両目が完全に閉じて、少しすれば寝息が聞こえてきた。
また起こさぬようゆっくり手を止め、慎重に手を離した。
…よし、寝たな。
布団を引き上げて掛けてやる。
また目を覚まして泣かれないよう、気を抜かずにしばらく寝息を聞いていた。
胸が大きく上下して呼吸するのを確認し、物音を立てないようにそっと部屋を出て行った。