看護師と入れ替わって部屋に入ると、小春はすぐに泣き止んだ。
しばらく泣いていたのか、頬にはいくつか涙のあと。
「りょ…せんせ」
「みんないないから眠れなくなっちゃったな」
「ひとりやだ…」
「寂しいよなぁ」
伸びてきた手を握り、そっと体を倒して寝かせる。
「ここにいるからな」
ベッドの側に椅子を寄せ、一定のリズムで胸を叩く。
「…せんせい?」
「…なに?」
「桃ちゃんのおかあさん、今日きてたね」
「…そうだね」
「桃ちゃんね、すごい笑ってたよ」
「…そうか」
「ママ、ぜんぜんこないね」
1人で小春を育てている母親は、病院に来る機会も少ない。
こうしてひとりになると、母親の温もりを思い出すのだろうね。
「お母さんに元気な顔見せられたらいいな」
「うん、ママに薬がんばってるって言うんだ」
「そうか。たのしみだな」