「…あ、涼先生」



それまで話していた奏太先生が肩を叩くので振り向くと、スタッフルームの入口に小さい影があった。



こちらの様子を伺うように覗いている。




「…俺かな?」


奏太先生が頷いたので、席を離れて入口へ。








「あ、どうした?」


スタッフルームの入り口にいたのは、桃だった。




何かを言いたげな桃の背中に手を当て、しゃがんで目線を合わせてやった。




「先生に話?」

「…あのね」




動く口元に耳を寄せると、


「こはるちゃんがね」


と小さな声が聞こえた。




「うん」


「こはるちゃんが、げぇした…」


「…小春吐いた?」





小さく頷く桃が、指先で俺の白衣を掴んだ。


わざわざ俺に言いに来たのか…?




「看護師さんに言えた?」


「ううん、あのね…」





一生懸命頭の中を整理する桃のペースに合わせ、急かさず話を聞いてやる。




「こはるちゃんがね…」


「うん」


「りょうせんせい、呼んできてって言った…」




少なからず桃の頭にも看護師に言うということはあったはずだけれど、小春に言われたら断れなかったんだろうな。







「わかった、行こう」



心配そうな顔をする桃の手を引いて、一緒に病室へ向かう。