「桃、検査行こうか」
「……」
診察を終えて一緒に検査へ向かおうとしたのだけれど、ベッドの上から身動きを取らずに怯えた表情をする。
何年も前から桃を診ているけど、入院は半年ぶりだもんね。
緊張もするし、不安だと思う。
「おいで」
左手を差し出すが、両手を背中で組んでしまった。
「おーい、小春」
そこで病室に顔を覗かせたのは、小児脳神経外科の先生。
「あ!しんどうせんせい!」
小春がベッドを降り、走って彼の元へ飛び込んでいく。
「おう、元気だったか?」
「元気だったよ!しんどうせんせいは?」
「元気だよ。小春、薬頑張ってるか?」
「頑張ってるよ!」
「そうか、よかった」
新藤先生が小春の体を離し、こちらへ目線を向けた。
「こんにちは」
「…にちは」
桃の震えた小さな挨拶。
「お迎えきました」
そうやって優しい笑顔を向けられる。
「ありがとうございます」
「桃ちゃん、先生と行こうか」
新藤先生が右手を伸ばして差し出した。
「そうだ、そうしよう」
ちょっと強引だが、桃の体をベッドから下ろして新藤先生の側へ。
「先生と手繋いでいこう」
「…検査?」
「検査。怖くないよ」
「…ほんとう?」
「先生がやるから」
新藤先生の言葉に桃は頷き、差し出された手を握った。
「お願いします」
「はーい」