「奏太 大丈夫?」
「あぁ」
たまたま現場に居合わせていた港が、後から見に来てくれた。
「止まった?」
「いいや、全く」
「来て」
流しで軽く手を洗い、指先で口の中を押さえたまま椅子に座る。
「これ持って軽く下向いて?」
膿盆を左手で持ち、流れる血を受け止める。
「翔は?」
「もう落ち着いて点滴再開してる」
「そう、よかった」
点滴中に暴れ出した翔の足が当たり、口の中を切った。
少しヤンチャな部分はあっても、今まであんな風に暴れたり、治療を嫌がったことはないのだけど。
口の中に広がる血の味ですぐに切ったことがわかったので、その場にいた看護師に翔を任せた。
「はい」
受け取った小さいガーゼを口の中に入れ、圧迫止血。
しばらく押さえてから一度ガーゼを取り出してみると、真っ赤に染まっている。
取り替えてもう一度押さえるけれど、止まる気配がない。
止血まで時間が掛かりそうだ。