「1時間程で終わりますので」


「ありがとうございます」






検査結果や症状から、今日は点滴をして家に帰ることになった。


点滴をしてくれた看護師が部屋を去り、丸椅子に腰を掛ける。








「…季蛍さん、退院したって?」





カルテを入力しながら、奏太がポツリと呟く。




「あぁ。昨日退院したよ」


「…喜んでただろ」


「すごくな」


「…普段はあんまり体調不良を表に出さないの?」


「愚図るか隠すかのどっちか。今朝は特に何も無かったと思ったけど」


「ふぅん」





「…奏太はやっぱり子供と接触するのが上手いな」


「ありがと。…てか、仕事だけど」


「はは、そっか」


「夏来くん、今日はやけに耐えたな」


「…俺も驚いた。普段こんなことないよ」






診察はまだしも、採血がすんなり出来たのは初めてだった。


"検査"と聞いた時、明らかに表情は固くなった。


それでも夏来は小さく頷き受け入れた。


季蛍の入院の姿を見てきたことが、診察を頑張る糧になったのではないかと勝手に思ってしまう。


…ただの親バカかもしれない。