「危ないから動かないでね」
看護師が優しく伝えるけれど、上半身が起き上がってしまった。
「…っ、パパ…」
「じゃあ手握ろう。すぐに終わるからな」
蒼が優しく胸を押さえ、起き上がった上半身を制止した。
拒まないからといって、怖くない訳じゃない。
「パパ…、いつ刺すの?」
「先に消毒するよ」
看護師が慣れた手つきで消毒をすると、小さな体がピクンと反応した。
「…こわい」
「大丈夫だからな」
そんなやりとりをしている間に、細い血管に針が入っていく。
大騒ぎする子ども相手に毎日採血をしている彼女からすると、お手のものだろうな。
俺も念のため体を軽く押さえていけれど、抵抗することもなかった。
「いい子ね、おしまい」
蒼が看護師と腕の止血を交代し、押さえながら褒めてやる。
「今日は強いな」
また嬉しそうに顔を綻ばせるが、その目は今にも溶けてしまいそうだ。
「眠ってもいいよ」
胸をさすって声を掛けると、すぐに眠ってしまった。