「昨日の夏来くんは?」
「…特に違和感はなかったと思う」
「そう、食事は取れてる?」
「問題ない」
「ん、ありがと。血液検査どうする?」
「…脳貧血だよな」
「そうだな。念のため検査してもいいとは思うけど」
「安心したい気持ちはある…よな」
「夏来くんに頑張ってもらうか?」
「できれば頼みたい」
「わかった、…嫌われなきゃいいけどなぁ」
思わず漏れてしまった本音。
普段子どもから投げ掛けられる"キライ"には慣れているが、夏来くんに言われるとヘコみそうだ。
「奏太がやる訳じゃないだろ?」
なんて蒼は笑うが、体を押さえているだけでも嫌われる可能性はある。
看護師が準備を始めてくれたので、目が閉じかけていた夏来くんの胸を叩いて起こした。
「眠たいのにごめんなぁ。ひとつ検査をしてもいい?」
「…けんさ?」
「悪いところがないか調べる検査。すぐに終わるよ」
さすがに嫌がるかと思いきや、小さな頷きが返ってくる。
今日はやけに頑張るんだな。
泣きじゃくっていた前回が懐かしい。
「えらい。お兄さんだな」
蒼に撫でられて嬉しそうだ。