「ありがとうございます」
看護師が押さえている扉の隙間から、夏来くんを抱えた蒼が顔を覗かせた。
腕に抱かれた夏来くんの体は、見た感じだと力が完全に抜けきっている。
思ったよりも酷そうだ。
「体育の途中で倒れた。喘息の発作じゃない」
ベッドの上に小さな体がゆっくりと下ろされる。
「意識はある?」
「倒れた直後はなかったって聞いたよ。今は声を掛ければ反応はある」
それを聞いて優しく肩を叩き、声を掛けてみる。
「夏来くん」
大きな声で名前を呼べば、微かに瞼が開いた。
意識があってよかったよ。
「話はできる?」
「…できる」
消えかけた小さな声ではあるが、返事は聞こえた。
意識も反応も問題はなさそう。