「パパ!」
キッチンから走って戻ってきた夏来に、危ないと声を掛けようとした時、夏来の持っていた皿が宙を舞った。
足を滑らせて顔から転び、持っていた皿は床に転がった。
「う…っ」
あぁ、もう泣きそうだ。
耐えているが、肩は震えている。
「大丈夫?」
声を掛けても体を起こそうとしないので、脇に手を入れて持ち上げた。
「うぅ゙…っ」
おでこを打ったのか、若干赤くなっている。
「痛かったな」
泣き声を聞きつけたのか、季蛍がキッチンから慌てて顔を覗かせた。
「すごい音した、何かあった?」
火の元から目を離せず、今様子を見に来たらしい。
痛みで泣き出す夏来の側に転がった皿を見て、察した季蛍も苦笑い。
「怪我ない?」
「大丈夫」
そう返すと、季蛍はキッチンへ戻った。
「どこ打った?」
額の赤み以外に気になるところもないし、怪我はなくて良かったけれど。
そんなことよりも、お皿を落としたことの方がショックかもね。