「くふふ…っ」
満面の笑みを浮かべて、リビングとキッチンを往復する夏来の姿。
季蛍が退院して初めての夕食。
久しぶりにみんなが揃うと思ったが、愛優は外で食べると連絡があった。
少し残念だけれど、友人の付き合いもあるからな。
無理は言わない。
夏来はこの日を1番楽しみにしていて、季蛍の手伝いを張り切ってやってくれる。
「パパ、はい!」
「ありがとう」
グラスを両手で大切に運んで来てくれた。
あんなに走り回って大丈夫かよ…
ヒヤヒヤしながら見守りつつ、ひとつずつ持ってきてくれる食器を受け取る。
「ふふふ…っ」
緩みきった口元を両手で隠しながら、夏来がキッチンから戻ってきた。
「いいことあった?」
「くふっ…」
「なんだよ、パパには内緒か?」
「ふふ…っ、あのね」
ピョンピョン飛び跳ねて嬉しそうだ。
「あじみしたの」
「…味見?」
「ママが内緒ねって」
口が軽いな、と思いつつ、クスリと笑ってしまう。
「そうか、よかったな」
「今日のごはん、おいしいよ」
季蛍のいる空間がよっぽど嬉しいみたいだ。