「退院決まってよかった」
「うん、やっと」
「頑張った甲斐があったな」
「私はなんにも…、高島先生が…ね?」
「でも、一度も逃げなかったな」
「…子供じゃないもん」
「大人でも逃げたくなる」
『突然2週間入院になったら』
点滴の管を手に取って、蒼がそう言った。
約2週間、私は病室にいたんだ。
短いようでとても長かった。
長い2週間の半分以上が辛かった。
そんな苦しい状況を乗り切れたのも、私のワガママを聞きながら治療法を考えてくれた高島先生と、優しい温もりをくれた家族の存在があったから。
「…ありがと。会いに来てくれて」
直接言うのは少し恥ずかしくて、目を伏せてしまったけれど。
「夏来も家で待ってるからな」
大好きな手で撫でられて、頬が緩む。
「…愛優は?」
「言うことなし。頼りになるよ」
「そっか。たくさん迷惑かけちゃった…」
「愛優はきっと季蛍の"ごめん"なんて聞きたくないと思うけどな」
「…そうだね。ありがとうって言わなきゃ」
両手で2人を抱きしめたい。
そんな思いは強くなる。
「職場だってみんな待ってるからな」
「…本当?」
「季蛍を待ってる」
「…そうかな」
「本当だよ?」
「…ちょっと怖いの」
「…怖い?」
「わかってるけど…
2週間離れた場所に戻るのって勇気いるでしょ?」
必死になって笑ったつもりでも、引きつった笑顔になったことは自覚していた。
だって、怖いでしょう?
信頼関係の強い職場であっても、
2週間離れたら、やっぱり不安になるんだって。


