「まだ立つなよ?」
点滴のスタンドを引き、上着を羽織って準備が出来た。
高島先生が差し出してくれた右手を掴み、両足に力を入れる。
「ゆっくり立って」
トイレ以外で病室をでることはほぼなかった。
久しぶりに外を歩く。
ゆっくり立っても少しフラついたが、高島先生がすぐに支えてくれた。
「気分平気?」
「ん、平気です」
「途中悪くなったら言って」
「はい」
右手で点滴を引きながら、病室を出る。
「今日はどこまで行く?季蛍が決めていいよ」
「…中庭まで行ってもいいですか?」
病室から毎日見ていた病院の中庭。
入院生活を少しの間忘れることができる、ちょっとした癒しの場所。
「じゃあ今日はそこまでな」


