「退屈そうですねぇ」
昼食を持ってきてくれた陸くんが、テーブルにそっとお盆を置いた。
「今日はいいお天気ですね」
「そうね」
「昨日の雨で洗濯が台無しになって、夜中洗濯機回したんですよ」
いつものようにゼリーをスプーンで崩しながら、陸くんが苦笑いを浮かべた。
「…ふふ、大変」
「男ひとりで家事ってのは無理ですね」
" はい "
そうやって渡されたゼリーのカップ。
「…ありがと。食べなきゃダメ?」
「うぅ、そんなに可愛く言われると「ダメ」って言いたくなくなっちゃいます」
なんて言うくせに、スプーンもちゃっかり渡された。
「退院に向けて食事の練習です」
「…これ、全部食べるの?」
お盆のお皿を指さして聞くと、陸くんは笑った。
「まさか。少しずつでいいです」
「…自信ない」
「無理はしなくていいです」
ゼリーすら食べていないくせに、"自信ない"って弱気なのに。
陸くんの優しい笑顔を見ると、やっぱりホッとする。
「ありがと…、頑張る」
「はい、後で取りに来ますね」