「遅くなってごめん」
「あ、パパ来た」
高島が夏来にそうやって声を掛けると、すぐに駆け寄ってきた。
「パパだ!」
「楽しそうだな」
「あのね、この人が心臓の音聞かせてくれたの!」
夏来が高島の右手を引いて、ぴょんぴょん跳ねながら楽しそうに報告してくる。
「ここ、どんな音だった?」
夏来の胸に手を当てて聞くと、
「ドクン、ドクンって動いてたよ!」
と、満面の笑みで教えてくれた。
「そうか、よかったな」
それでも未だに高島は
"この人"
らしい。
「ありがとう、大変だった?」
「いいえ、全く。夏来くん、いい子ですもん」
「…はは、そうならいいんだけど」
「…季蛍と話はできました?」
「少しな。…後で声掛けてやって?」
「はい…、徐々に熱が上がると思います」
「そうだな、手が熱かった」
「ッパパ!ね、行こ?」
「わかった、待って」
「ふふ、夏来くんは元気ですね」
「夏来、先生にお礼して」
「…ありがとございました」
「いいえ。また来てね」
「…また会える?」
「また会えるよ。パパと病院においで?」
「わかった!」
大きな手のひらと小さな手のひらのハイタッチ。
「先生、またね」
高島の姿が見えなくなるまで、夏来はずっと手を振り続けていた。