_「疲れた?」
病室は2人きり。
高島の
『夏来くんがいるところでは話せないこともきっとある』
そんな思いから設けてくれた2人の時間。
「ううん、そんなことない」
無理に笑う季蛍だけど、顔色は青白い。
夏来に心配を掛けたくない気持ちはわかるが、俺の前では素でいて欲しいとも思う。
「少し食べる?」
買ってきたゼリーとフルーツをテーブルに並べると、口角を上げる。
「ありがとう」
季蛍が選んだゼリーの蓋を開けてやり、スプーンと一緒に手渡した。
「久しぶりだな、こうやって2人になるのは」
「…そうだね、忙しいもんね」
「でも、頑張ってて安心した」
「……そうかな」
スプーンでゼリーを崩しながら、季蛍は小さくため息を吐く。
「点滴のルートも腕じゃ取れないって。回復の気配なくて嫌になる」
右手を見せながら、無理な笑顔を浮かべる。