「ここ?パパ、ここ?」
夏来に向かって頷くと、小さな拳で扉を数回ノックした。
「入っていい?」
「いいよ」
小さな体で病室の扉を開け、隙間から中を覗いている。
「ハ…ッ!」
隙間をすり抜けて中に入っていった夏来は、ベッドに座っていた季蛍の胸に飛び込んだ。
「ママ!」
「夏来、よく来たね」
夏来を受け止めた時に若干顔を歪めたのは、きっと痛みがあったからだろう。
体調が万全でないことは、パッと見ただけですぐにわかる。
「元気だった?」
「元気だった!」
「…ッ、いい子にしてた?」
「うん!お手伝いもいっぱいした!」
そんな夏来を抱きしめる季蛍は、笑顔を浮かべつつ涙を溜める。
「そっか…、えらかったね」
「…ないてるの?」
震えた声に気がついた夏来が季蛍の顔を覗き込み、不安そうに小さな手を頬に伸ばす。
「ううん、泣いてないよ」
明らかに頬に涙は伝っているが、季蛍は首を左右に振って笑顔を見せる。
「ないてるよ…、かなしいの?」
「ううん、嬉しいんだよ」
両手で必死に涙を拭い、夏来を包み込むように抱きしめる。
「ありがとうね、来てくれて」


