「パパ、さっきの人だれ?」
「夏来…、誰かわかってなかったの?」
「ん…、うん」
記憶のどこかにあるはずだけれど、ハッキリとは思い出せないか。
「ママの病気治す人だよ」
「…びょうき?」
「そう。夏来が風邪を引いたら誰が治す?」
「んーっ…、パパ!
……パパはママを治さないの?」
「…そうだな、パパが治さなきゃな。
でも、あの人もママを治せるんだよ」
「…あの人がママのお医者さん?」
「そうだよ。夏来にはちょっと難しいな」
服の裾を握りしめている夏来の小さな手。
俺から見れば小さい夏来も、頭の中でいろんなことを考えているのだろうなと思う。
それにしても、高島はそろそろ夏来に名前を覚えてもらった方がいい。