呼吸が落ち着いてから、額の冷却シートを替えてくれた。
「高島先生に報告しておきますね。
季蛍さん、あんまり泣かないで…?」
無意識に流れる涙は、止めることも出来ない。
「…どこか痛みますか?」
「ううん…、大丈夫」
手をつけていない食事のお皿も片してくれる。
「陸くん…?」
細い声で名前を呼べば、片していた手を止めて目を合わせてくれた。
「面会5分でも許してもらえるように高島先生に言ってください」
それは不可能なことだから。
できないことだって、私だってわかっているから。
泣きながら伝えても、無理なことはわかるから。
それでも諦めきれなかった。
明日じゃ遅い。今日会いたい。
体調の限界なんかより、会えない限界の方が何倍も苦しい。
彼は私の言葉を聞いて、辛そうに表情を歪めた。
頼んでもきっと許可は下りない。
彼はわかっているからこそ、そんな表情をするのだろう。