病室の扉がゆっくり開くのがわかって、誰かが中に入ってきた。
「電気つけるよ」
「はい」
陸くんが返事を返すと、病室の明かりがぼんやりついた。
「……過呼吸?」
高島先生が胸に耳を寄せ、喘息でないことを確認する。
「いたい…ッ」
無意識に口から零れる"痛い"を聞いて、先生は眉を寄せて困った顔をする。
「痛い?」
「すみません、僕が話を振ってから泣き出してしまって」
「あぁ、関係ないと思う」
優しく笑う高島先生は、陸くんと場所を代わった。
「どこ痛い?手で触って」
指先を額と胸に順番に当てると、険しい顔をした。
「点滴していい?」
一瞬悩んだけれど、頷くと指示を聞いた陸くんが病室を出て行った。
水分を自分で採ることが困難だから、どうしても内服薬は避けられてしまう。
それでも痛みが軽くなるなら、選択を迷うことはない。