「…よし。」
最後のボタンを止め終わると、季蛍は小さく「ありがとう」と呟いた。
「朝も昼も全然食べられなかった」
ベッドの中に潜りながら、無理矢理な笑顔を浮かべる。
心配を掛けたくないのはわかるけれど、その笑顔には無理がある。
「何なら食べられそう?」
「今はいらない…」
涙目になった目が離せない。
「食べたいものがあったら買ってくるから」
「…ありがとう」
「よし、もう無理はやめよう。はい、おやすみ」
せっかく会えたから、と無理をするのが季蛍だから。
「荷物整えたら帰るね」
「……。わかった」
「寝ていいから」
「…ね、蒼?」
「…ん?」
「夏来、元気?」
「元気だよ、会いたがってた」
「…寂しい思いさせてるね」
「熱が下がったら連れてくるよ」
「うん…そうだね」