ゆっくり体を下ろし、溢れる涙を指で拭ってやる。
「熱が高くて会えそうにないの。今日だけ我慢できる?」
「びょいん…、にゅ…いん…?」
「そうだよ、入院」
「なつも行く…、おねがい」
唇をぎゅっと噛み締めて耐えているのを見ると、心苦しくなる。
「おいで…」
腕の中で抱き締め、頭を撫でてやる。
夏来を抱きしめることは出来ても、季蛍と同じ安心感を与えることは出来ない。
「熱が下がったら会いに行こう」
「下がったら会える?」
「会えるよ」
「…ぜったい?」
「絶対。やくそくしよう」
「…わかった」
絞り出したような小さな声。
夏来も本当はまだ甘えたいはずだけれど、必死に耐えているんだよね。
「いい子だね」
たくさん頭を撫でてやり、もう一度ぎゅっと抱きしめる。
「じゃあ行ってくる」
夏来の体を離したところで、様子を伺いに愛優がやって来た。
「愛優、頼むね」
「わかった、気をつけてね」