「うわあぁ……っ」
昼寝をしている夏来を起こさないよう、静かに家を出るはずだったのに。
洗濯機の完了を知らせるアラームが鳴り、目を覚ましてしまった。
「ぱぁぱぁ…ッ!!」
「夏来」
脇の下から体を抱き上げ、興奮しないよう背中をさする。
「病院行ってくるね。愛優いるから留守番できる?」
「…ゔ、…ッ」
「すぐ帰るから」
「いっ……、行く……ッ」
"一緒に行く"
普段出勤する時でさえ、
『一緒に行く』
そうやって俺を引き止めたことは一度もない。
「…ゔわぁ…っ」
これでもかと泣きじゃくり、ワイシャツが夏来の涙で濡れていく。
「夏来、聞いて?」
「ん…?」
「ママに着替え届けに行かなきゃ。服がないと困るでしょ?」
「いっしょ…に行く…ッ」
「今日はごめん。お留守番」
今朝、診察を終えた高島から来ていた連絡。
"熱が40度超えました"
最初の一文はそれで、そのあとには面会が出来ない内容が書かれていた。
本来なら夏来を連れて季蛍の面会に行く予定だったが、その連絡を受けて予定は変更。
今の季蛍に急変なんてつきものだから、夏来に事前に伝えることは避けておいた。
そうしておいて、本当に良かったと思う。
それでも夏来の『季蛍に会いたい』気持ちは変わらない。