血液検査、CT共に異常なし。
痛がる理由はわかっているが、呼吸困難を誘発した原因はハッキリしない。
他の検査結果も見てみたが、特に引っ掛かるところはなかった。
今日撮ったレントゲンの結果も踏まえて見ながら、小さくため息を吐く。
…これじゃ痛むはずだよな。
体に負荷が掛かるような喘息も、体に現れた蕁麻疹の異変も、何も言わずに仕事を続けていたのか…。
ここ数週間のことを振り返っても、診察をしたいと声をかけるまで何か変わったことも特になかったと思う。
何もかもがいつも通りだった。
診察室に戻る途中に見つけたスーツ姿の彼に、正直ホッと肩を下ろした。
こんなことを言うとに頼りないと言われるかもしれないが、今は正直会って欲しいと思う。
それが今の季蛍には、必要だと思うから。
向こうも僕に気が付き、こちらに向かって歩いてくる。
「蒼先生」
本当は病院に戻らずに、直帰だったはずだけれど。
「学会どうでしたか?」
「あぁ…うん、問題ない」
苦笑する蒼先生は
「そんなことより」
と言った。
「…聞きましたか?」
「聞いたよ…、驚いた。会わせて?」