点滴をしてそのまま家に返した夜、体調が急変した季蛍が救急車で運ばれた。



救急車を呼ぶ前に季蛍から連絡があり、


『息ができない』


電話越しに言っていた。






無事に…、と言うのか?

とりあえず病院に到着して良かった。








手首で脈を測り、聴診器を胸に当てて心音を聞く。


意識はあるはずだが、目を瞑ったまま反応はない。


服を直して肩を叩き、声を掛けた。





「季蛍」


瞼は少し開いたと思うが、顔を動かすこともなく、またそっと目を閉じた。






「苦しくない?」


首がほんの少し、縦に動く。





「誰が救急車呼んだの?」


「…」



聞いても返事はないまま、虚ろな目で天井を見つめている。



「…。

点滴が終わるまで眠ってていいから」





呼吸をする度に肋骨が痛むそうで、救急車の中では泣き喚いていたと聞いた。


そのまま帰らせたことも良くない判断だったと思う。


薬で一時的に痛みが引いているようだが、赤色に染まった頬に触れれば、熱い体温が伝わってくる。


…よくないな。







「検査結果の確認してくる」



微かに頷いた季蛍を見て、そっと部屋を出た。